1月のおわりと雪
最近は仕事と家事の繰り返しの合間に、寒い地域に関連した書籍やドキュメンタリーを集めています。
アラスカ、チベット、北欧、南極、
氷や雪、そこで暮らす生き物、
自然の力強さと優しさ・厳しさ、
北国ならではの暖かさを感じる文化、
南の九州で長く生活してきた自分には、憧れに近い物があります。
先週、九州にしては珍しく大雪が降りました。
県の山間部では40cmにもなったそうで、雪に慣れない九州の人たちにとっては非常事態でした。
私はというと家から出る必要もなかったため、外の雪を眺めながら刻々と白くなっていく街の変化を楽しんでいました。
雪ってなんであんなにわくわくするんでしょう。
毎年冬に雪でお悩みの地域にお住まいの方には「気楽でいいな」と怒られるかもしれませんが。
近所にはスタッドレスタイヤやチェーンを持たない家がほとんどのため、雪が積もるとほぼ車の音が街から消えます。
シーンとした白銀の世界。
降り続ける雪の音すら聞こえてきそうな空気。
車や人の生活音が一切聞こえない街というのは、非日常的で神秘的でもありました。
「こんな景色が地球上のあちこちに当たり前に存在している。」
星野道夫さんのドキュメンタリーを観ていた影響か、この言葉が頭に浮かびました。
写真家・星野道夫さんの事を知ったのは、彼が亡くなった後。
偶然観たドキュメンタリーに惹かれ、著書をとにかく集めました。
アラスカに興味があったわけでも、写真が趣味だったわけでもなく。
ただ星野さんの綴る言葉と残した写真は、何か自分が今まで存在を知らなかった自然の新たな側面を提示しているようでした。
静寂と大いなる自然が広がる極北の生活、
そんなものが自分が生きている地球に存在しているという事。
どこか非現実でもあり、手を伸ばせば体験できそうな距離にあるその自然は、憧れとなっていきました。
「僕が東京で暮らしている同じ瞬間に、同じ日本でヒグマが日々を生き、呼吸をしている。
確実にこの今、何処かの山で、一頭のヒグマが倒木を乗り越えながら力強く進んでいる
そのことがどうにも不思議でならなかった。」
( 旅をする木 (文春文庫) )
極北の地域への憧れは、まさにこの一文に凝縮されています。
そこでの暮らしには何があるのだろう、
地球の南側で自分が生きていようがいまいが、極北の偉大な自然は力強く存在し、そこで生き物は当たり前に生活をしている。
星野道夫さんの写真と文章は、素晴らしい瞬間や景色を捉えた美しさよりも、いままで存在を知らなかった大いなる自然の存在を教えてくれるものでした。
100年に1度とも言われる今回の大雪が、忘れていたその憧れを呼び覚ましてくれました。
日々の生活で避けることのできない心を乱す様々な物事が、小さくなっていくようでした。
気付けばとても狭い範囲の世界にしか考えが及んでいなかったように思います。
出会ってから何年も経った今でも、星野さんの言葉は心の拠り所となっているのだと感じ、嬉しくなりました。
冬がとても好きです。
生き物の死ぬにおいがする夏も美しいけど、
厳しい自然に立ち向かう命の熱を感じる冬が好きです。
暖かさに生き物が救われる冬が好きです。
そんな冬の寒さと常に向き合う北国の生き物を、今より少しでも知りたいと思います。